日替わりケーキとおしゃべりタイム
それから、美味しいすき焼きとビール、そして、貰い物だと言って冷蔵庫から出てきたサラミとチーズによって、私の酔いはどんどん回っていった。

同じ量を飲んでるはずなのに、手際よく片付けをする井上くんの姿を、テーブルに伏せて見つめる。

仕事もできて、料理もできて、大人の余裕もある井上くんが羨ましい。

仕事で失敗だらけで、コンビニ弁当やらインスタントの多い食生活の私自身がとても惨めに感じる。

そんなことを考えていると、目がじわっと熱くなって視界がぼやけてくる。

やだな、こんなに楽しかった後に、涙なんて流したくないのに。

テーブルに伏せたまま、反対側に顔を向けて、そっと袖で涙を拭った。

ジャーっというシンクの水の音が響くリビング。

時折、食器の音が耳に届く。

明日から、頑張ろう。








「はい、忘れ物」

コトンと何かが置かれた音がして上体を起こす。

テーブルには、おしゃれなグラスにカフェオレが注がれ、ストローが添えられて置かれていた。

これって…

「今日…井上くんがくれたカフェオレ?」

「うん。忘れてただろ?」

悪戯っぽく笑う井上くんに、図星だった私は笑って誤魔化す。

「酔い覚ましにでも」

「ありがとう」

井上くんは、自分用にブラックコーヒーを入れたグラスを持って、私と向かい合わせに座る。

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