日替わりケーキとおしゃべりタイム
「よかった。飛鳥さん、本当に美味しそうに食べるね。前にさ、翼くんが言ってた。飛鳥さんの食べっぷりは見てる方がスカッとするって」

井上くん、そんなこと言ってたんだ。もう一口食べて、家族に私のことを話していたことに、ちょっとだけ嬉しくなる。

「…翼くんと最近会えてる?」

心配そうに尋ねた律くんの様子から、きっと井上くんの現状を既に知っていることを察した。

誤魔化す必要ないんだ…。

「…ううん」

私は小さな声でそう言って、首を横に振った。

律くんは、「そっか…」とだけ答える。

何も言わない直樹も、きっと律くんから話は聞いているんだと思う。

気持ちを押し込むように、美味しいりんごゼリーを口へと運ぶ。

「…実はさ、翼くんの分も作って来たんだよね、ゼリー」

えっ…

顔を上げると、優しく微笑む律くんと目があった。

「甘いもの苦手な翼くんだけど、このりんごゼリーは好きなんだって」

カウンターに小さな箱を置いた律くんをもう一度見ると、王子様のようなキラキラした笑顔で、口を開いた。

「もしよかったら、明日渡してほしいんだ」

「…うん」

会いに行くきっかけができて、ちょっと心が軽くなる…。

「翼くん、きっと飛鳥さんに会いたいと思う」


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