日替わりケーキとおしゃべりタイム
「…一瞬、夢を見てるのかと思った…」

優しく抱きついたまま、井上くんは小さく呟く。

「…あのね、昨日、律くんからりんごゼリー預かってきたの。あと、直樹からは、サンドイッチの差し入れ。みんな、井上くんのこと気にかけてるよ」

そう伝えると、ゆっくりと私から離れて、テーブルの上の紙袋に視線を移した井上くん。

少し痩せ細った細い腕で、紙袋を手に取って中身を覗くと、すぐに私の顔を見た。

「このアイマスクは、飛鳥から?」

「うん。電子レンジで温めて何度も使えるの」

井上くんは、クスッと笑って、「飛鳥らしい」と一言。

よかった…やっと笑ってくれた。

「井上くん、律くんのりんごゼリーは食べれるんだね」

「うん。不思議と」

早速、りんごゼリーを使い捨てのスプーンですくって、口へと運んだ井上くん。噛み締めるように味わって、もう一口食べた。

ふと、井上くんのデスクの上に、栄養ドリンクの瓶が数本、空になって置いてあることに気がついた。

「ちゃんと食べてる…?」

私の質問に、井上くんは、苦笑い。

「時間が惜しくて…」

やっぱり…。

私の心境を察したのか、食べかけのりんごゼリーを置いて、サンドイッチを手に取った井上くん。

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