日替わりケーキとおしゃべりタイム
「有り難く、いただきます」

そう言って、大きくかぶりついた。

「うまい。野菜もたっぷり入ってるから、朝食にピッタリだ」

ちゃんと食べている姿に、内心少しだけほっとする。そして、表情も少し明るくなった気がして、さっきの動揺が薄れていった。

「やっぱ、食わないと駄目だよな…」

あっという間にサンドイッチを完食した井上くんは、りんごゼリーの残りに手を伸ばす。

「一口、食う?」

「ううん。私、昨日食べたの」

それに、ちょっと今は、あまり食欲が湧いてこない。朝食も少ししか食べれなかったんだよね…。

「…飛鳥、疲れ溜まってるだろ」

井上くんの言葉に、心臓が飛び跳ねそうになる。

「…ごめんな、会社早く落ち着かせたいんだけど…」

「ううん。井上くんは頑張りすぎってくらい頑張ってるよ」

噂で聞いたのは、井上くんが直接、元許嫁のお父さんに断りの電話を入れたということ。先方は、ご立腹で、後ろ盾もなくなり、さらに窮地に追い込まれているということだった。

やっぱり、私の存在が、井上くんを苦しめているんだと自分を責めてしまう。

でも、大好きな人との別れを選択する勇気が持てない…。

私…ずるいよね…。

でも『待ってて』という言葉を信じていたいし、裏切りたくない。










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