日替わりケーキとおしゃべりタイム
ストローで、カフェオレを吸い上げると、口の中に甘さが広がっていく。

お腹いっぱいのはずなのに、体の隅々まで糖分が行き渡る。

「そういえば、梅田って彼氏いなかった?」

「い、居たけど…つい先日別れた」

まさか、このタイミングで聞かれるとは思わなくて、焦って答えてしまった。

「あっ、なんかごめん。…いや、今更だけど、彼氏がいたら、ご飯なんて勧めちゃ不味かったかなって…」

苦笑いの井上くんは、そう言うと髪の毛をくしゃっとした。

確かに…。

「居ないから、気にしなくていいよ」

井上くんって、結構そう言うところ気にする人なんだ。気遣いまでできるのか…。

ニコッと微笑み、心の中でそう考える。

私の微笑みに、気まずそうに笑って、井上くんはブラックコーヒーを口に運んだ。

「…井上くんって、女性関係の噂全然聞かないよね」

「えっ?俺?…んー…色々あって、その辺は慎重になってる」

色々という言葉が妙に気になったけれど、あまり深く聞かない方がいいんじゃないかと思って、聞き流す。

「井上くんの彼女になる人って、すごく幸せなんだろうな」

代わりに、今日数時間一緒に過ごした正直な感想を述べた。

私の言葉に対する反応がなく、不思議に思い、カフェオレを一口飲んで井上くんを見ると、何かを考え込んでいる様子だった。


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