日替わりケーキとおしゃべりタイム
「すいません、約束はしていないのですが、副社長とお会いしたいのですが」

飛鳥の勤務先の一階の受付で声をかけると、俺を見て頬を少し赤らめる女性社員。

「は、はい。空いているか確認いたします。お名前よろしいですか?」

「円堂と申します。伝えればすぐに分かるかと」

多分、流石に俺の苗字覚えてるよな…。

待っている間、一階の様子をぐるっと見渡す。

綺麗なオフィスだし、一見充実してそうに見えるけど…よく見ると、すれ違う社員の表情に余裕がない。

結構みんな一杯一杯なんだな…。

「円堂様、確認が取れました。副社長室は、12階の突き当たりの左手側となります」

外勤中じゃなくて良かった。

「ありがとうございます」

笑顔でお礼を言うと、周りにいた女性社員たちの顔まで赤く染まっていく。

エレベーターにのってから 、1人だけの空間で苦笑いをする。

仕事中の営業スマイルを出しちゃったな…。

鏡に映る姿を見て、気持ちをもう一度引き締め直す。今頃、井上くん俺がどうして来たのか考えてるんだろうな。

エレベーターを降りて、副社長室の前まで足を進める。

背筋を伸ばして、ノックをした。


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