日替わりケーキとおしゃべりタイム
返事よりも先に、内側から扉が開く。

「円堂くん、どうしたの?」

驚いた様子の井上くんがすぐに俺を招き入れる。笑顔だけど、違和感を感じる。

やっぱり、疲れてる感じは隠しきれていないな。

「一昨日は、サンドイッチありがとう」

「どういたしまして。お口にあったようだから、今日はこれ」

そう言って紙袋を差し出すと、キョトンとした様子で俺の顔と紙袋を見る。

「ハンバーガー。ランチにどうぞ」

「うおっ、マジか。ありがとう、本当に助かる」

ぱあっと表情を輝かせて、尻尾を振る犬のように嬉しそうに紙袋を受け取った井上くん。

こういうところ、ちょっとだけ飛鳥に似てるんだよな。

自分のデスクの上に紙袋を置いて、横のカウンターに置いてあるコーヒーメーカーでコーヒーを淹れてくれた井上くんは、俺と向かい合うようにふかふかのソファーに腰掛ける。

「でもさ、ハンバーガー届けに来ただけじゃないでしょ?ちゃんとした格好して来てるし」

さすが、そういう切り替えは早い。かと思ったら、コーヒーを一口飲んで、悲しそうな表情を見せた。

「…中々成果の出ない俺に喝入れに来た感じ?」

「いや、そういうんじゃないけど…」

苦笑いの井上くんに、俺は思わず遠慮気味に口籠る。

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