日替わりケーキとおしゃべりタイム
「急だけど、明日の夜18時にこのお店で3人とも会ってくれるって。元々、この3社同士がすごくつながりが強いから、うまく話が伝われば、きっと強い味方になってくれるよ」

電話で話した感じだと、若い世代で会社の上にいる人を応援したいと思ってくれているとの事で、前向きに考えてくれそうだった。

「…男のプライドがあると思うから、無理強いはしないけれど…これは全部「飛鳥のため…なんだよな」

言おうとしている言葉を、井上くんが先に言い切る。そのことだけで、もう井上くんの気持ちが固まっていることを理解できる。

きっと大丈夫。上手くいく。

そう思って、コーヒーを飲み干す。

「じゃあ、そろそろ失礼するね。忙しいのに、ありがとう」

「いや。ありがとうは俺のセリフ。本当に感謝してる」

井上くんも立ち上がって、俺よりも先にドアノブに手をかけて扉を開ける。

「どういたしまして。飛鳥のこともよろしくね」

笑顔でそういうと、井上くんは穏やかな表情で頷いた。

早く会社のことが落ち着いて、飛鳥が全てを井上くんに打ち明けることができることが、今の俺の1番の願い。

だから、何も知らない井上くんに、ちょっとだけ焦りをプラスしてあげたくなった。

「あんまり待たせてると、手出しちゃうよ?」

「えっ」

「なーんてね。冗談」

ものすごい勢いでフリーズした井上くんに、俺は悪戯っぽい笑顔を向ける。

「気が向いたら、差し入れ持ってまた来るかも」

そう言って、俺は副社長室に背を向けてエレベーターへ向かった。

あっ、飛鳥への差し入れ井上くんに託せば良かった。まあいっか、受付に預けておこう。





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