日替わりケーキとおしゃべりタイム
「あら、美味しそうなゼリー。ひとつもらってもいい?」

「あっ、うん。それ、直樹が作ったの」

マスカットのゼリーを手に取って、冷蔵庫の扉を閉めたお姉ちゃんは、私の言葉にまじまじとゼリーを見る。

「相変わらず、直樹に可愛がられてるわね、飛鳥は」

「…そういうわけじゃないけど…」

少し、お姉ちゃんの口調が刺々しくなり口籠もってしまう。

「優璃さん、酒飲みます?ちょっと飛鳥と買いに行ってきますよ?」

「あら、そう?お願いしようかしら」

きっと、井上くんは、ちょっとお姉ちゃんの空気が変わったのを察したんだと思う。

「久しぶりに日本酒飲みたいわ」

お姉ちゃんはご機嫌にそう言うと、ゼリーをスプーンですくって食べた。

「行こうか、飛鳥」

「う、うん」

井上くんに声をかけられ、お姉ちゃんのいるリビングから出て玄関に向かう。

「行ってらっしゃーい」

リビングから、お姉ちゃんのゆるーい声が響いて、私は井上くんと顔を合わせて苦笑い。

「しかし、突然だったな」

コンビニへと向かいながら、井上くんは困ったように呟いた。

「うん…。お姉ちゃんらしいといえばそうなのかも…」

海外に行く時だって、結婚する時だって、いつも急だったし。

そして、反対できないような空気を作り上げてしまうお姉ちゃんをある意味すごいと思ってしまっていた。

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