日替わりケーキとおしゃべりタイム
「冗談よ。おつまみまで買ってきてもらって悪かったわね」

日本酒をついで、ナッツの袋を開けたお姉ちゃんは、さらっとそう言って、座った。

「じゃあ、俺はそろそろ帰るよ。飛鳥、明日10時ごろ迎えにくるから」

「うん」















「どうせ、あの人は、私なんかより若くてふわふわした女の方が好きなの」

「何かの勘違いじゃ「勘違いじゃないわよ。この目で、鼻の下伸ばしてるの見たんだから」

お酒の入ったお姉ちゃんは、半分怒っていて、半分悲しんでいた。

旦那さん、そんな人には見えないんだけどなあ…。でも、お姉ちゃんがここまで怒ってるし…。

「…私だって、好きでこんな尖ってるわけじゃないわよ」

「えっ…?」

そう呟いたお姉ちゃんは、グラスに入った日本酒を飲み干して、またたっぷりと注ぐ。

「…ずっと、飛鳥のこと羨ましかった…」

「お姉ちゃん…?」

頬杖をついて、口の中へナッツを放り込むお姉ちゃんは、今まで聞いたことのないような暗い声で話を続ける。

「いつだって、私は完璧を求められるのに、抜けてるところがある飛鳥は、自然と周りが寄ってきて可愛がってくれる…」

「そ、それは…」

意外だった。完璧を求められていると感じていたお姉ちゃんがいたということに。

直樹みたいに、なんでもできちゃう天才だと思ってたから。




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