日替わりケーキとおしゃべりタイム
「…たまに思うわ。押しかかっているものを全部捨てて、ゆったりと過ごしてみたいって。でもね、そう思ってるだけで、実際にそうなる勇気もない…。気持ち悪くなるのよ、自分が」

グビっと大きな一口でグラスの半分ほどお酒を飲み干すと、お姉ちゃんは立ち上がって、スーツケースから何かを取り出した。

「はい。一応お世話になるから、お土産。と言っても、時間もなかったから家にあったものだけど」

簡易的な袋に入ったものを私に渡したお姉ちゃん。

中身を見ると、イングリッシュマフィンが何個か入っていた。

「ありがとう。明日の朝食べよう」

「両面カリカリにすると美味しいわよ」

ふふっと一瞬だけ笑って、日本酒を飲むお姉ちゃんをみて、今日ならきける気がして、勇気を振り絞る事にした。

「…お姉ちゃんって、私のこと…嫌い…だよね?」

私の言葉に、口に運びかけていたグラスを置いたお姉ちゃんは、頬杖を外して、私をじっと見る。

ドクンドクンと大きな鼓動が自分の中に響いていた。

「…嫌い…とは違うわよ」

えっ…違うの…?

予想外の答えに、私が驚いていると、お姉ちゃんはお酒を一口飲んだ。

「あえて言葉に当てはめるなら…嫉妬と…あんたのペースに引き寄せられてしまう危機感よ…」
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