日替わりケーキとおしゃべりタイム
「ごめん、ちょっと電話してくる」

「ん。ごゆっくり」

全てお見通しの直樹は、ニコッと笑ってそう言うと、食べ切ったお皿を下げ始める。

外に出て、入り口付近で電話に出る。

「…も、もしもし」

『もしもし。良かった、出てもらえて』

電話越しの声から、井上くんのほっとした様子が想像できる。

「梅田、今出先?」

目の前の道路を通過していく車の音で気がついたのだろう。

「うん、でももうすぐ帰るところ」

『そっか。…あのさ、良かったらこれから飲みに行かない?』

「えっ…」

『あっ、急な誘いだし、嫌だったらはっきり断っていいんだけど…』

「ううん…行く」

この際だし、さっき直樹と話してたことちゃんと聞こう。

『じゃあ、俺のおすすめのお店あるから、7時にN駅に』

「うん。じゃあ、また後で」

電話を切って、ほっと胸を撫で下ろす。

いつも通りに出来たかな…。

7時、ということはあと2時間後。お化粧し直して、服も着替えないとだよね。流石に通勤スタイルでは行けないよ。

「お帰り」

中へ戻ると、洗い物をしている直樹と目が合う。

「これから、デート?」

「えっ、な、なんで」

分かるの?

言い当てられておどおどする私を見て、直樹はくすっと笑い、私のおでこをちょこんと人差し指で押した。

「顔真っ赤だし、ちょっと眉間に皺寄ってたから」

ニコッと笑う直樹を見ながら、顔に全て現れてしまっているという事実に、さらに顔が熱くなった。


< 20 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop