日替わりケーキとおしゃべりタイム

えっ…？

言葉の真意を理解する前に、井上くんの手が伸びてきて、私の前髪に触れた。

気づけば、私のおでこに、井上くんの柔らかい唇が一瞬触れて、ゆっくりと離れた。

突然の出来事に、私はおでこを抑えて固まる。

「…酔ってるから」

井上くんはもう一度そう言うと、今度は私の身体を両手で優しく包み込んだ。

自分の体が、熱を帯びて心拍数がどんどん上がって行く。ふと、私の心臓の音とは異なるもう一つの心拍が聞こえることに気がついた。

すごく…どくどくいってる。

いつもの冷静な井上くんからは想像できないほどの緊張が伝わり、こんな状況なのにちょっとだけ私の緊張がほぐれた。

そして、同時にこの腕に包まれる安心感を感じている自分に気がつく。

気づけば、無意識に井上くんの背中に自分の腕を回していた。