日替わりケーキとおしゃべりタイム

たまには和食

ブーッブーッ

私と井上くんの唇が離れると、井上くんのスマホが振動した。

「…出ていい?」

「うん」

井上くんは私の返事を聞くと、電話に出た。

「おー久しぶり。あー…俺はいいかな。ちょっと今彼女といるから」

〝彼女〟

という響きに、なんだか気恥ずかしくなってしまう。

きっと、友達からの誘いの電話かな。いいのかな…?

そう思いながら、テーブルの上のお皿やカップを片付けようと重ねていると、井上くんの電話からかすかに

『誕生日おめでとう』

というワードが聞こえた。

えっ、誕生日って…井上くんの?

手を止めて、井上くんの方を見ると、バチッと目が合う。

井上くんは苦笑いをすると、私の気持ちを察したのか、軽く私の頭を撫でる。

「うん。じゃあ今度飯でも奢ってよ。おう、じゃあ、また」

電話を切った井上くんは、私が持とうと思っていたカップを持ってくれて、私の後ろをついてくる形で、シンクまで運んでくれた。

「誕生日だったの?」

「うん。別に気にしなくていいから」

「だ、ダメだよ。よく考えたら、私、井上くんの個人情報全然知らない」

「個人情報って…」

私の言葉に、くくっと笑う井上くん。

「私、何も考えてなくって、本当にごめんね」

きっと、高校生くらいだったら、好きな人とか彼氏とかの誕生日はちゃんと確認して、ソワソワしていたはず。

「だから、いいの。誕生日に飛鳥といるんだから、それでいいんだって」

爽やか笑顔の井上くんだけど、やっぱり何かしてあげたくて、

「明日、お出かけしよう?」

と、洗い物をしようと腕まくりをした井上くんの腕をガシッと掴んだ。





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