日替わりケーキとおしゃべりタイム
「飛鳥は?」

「私は、炙り系かなあ」

「へーいいね。炙りサーモン旨いよね」

「うんうん」

こんな風に、気を遣わないで話を膨らませて会話できることが嬉しくて、そして楽しくて、居心地がとても良い。

ふと、大きなあくびをした井上くんを見て、そういえば昨日出張から帰ってきたばかりだったと思い出す。

「出張、大変だった?」

「うん?まあ、内容も内容だったし」

「すごいな。井上くん、大きなプロジェクトリーダーだもんね」

「んー…俺の実力なのかは、謎。まだそんな器じゃないのにな」

冗談めかす井上くんの言葉に、私は心の中で何か小さな引っかかるものがあった。

実力、あると思うのに。

「それより、俺出張中何考えてたか当ててみて?」

赤信号で停止した車の車内に、井上くんの質問が響く。

「えっ?それ絶対当てられないやつ」

「奇跡的に当たるかも」

くくくっと笑う井上くんは、すごく悪戯っぽい笑顔。


「寿司食いたいな?」

「ううん」

「もうすぐ誕生日だ」

「いや、違う」

「あっ、美味しいもの食べたい!」

「食べ物系じゃない」

「えー…じゃあ、早く会社戻りたい」

「あー…かすった」

かすった?

んー…

「会社のみんなに会いたい?」

「あー半分正解」

「えー、もうギブ」

私がそう言うと、井上くんはくくっと笑った。








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