日替わりケーキとおしゃべりタイム
「は、初めまして。梅田飛鳥と申します」

まさか、井上くんの親族に会うなんて考えてもいなかったから、心の準備が全然できてない。

変な汗かいてきた。

「奥の座敷開けてるから、ゆっくりして行くといい」

「ありがとう、じいちゃん」

私はお辞儀をして、井上くんの後をついていく。

笑った顔、確かにちょっと井上くんと似てたかも。

「びっくりした?」

「うん。すごくびっくりした」

座敷に座って、お品書きを私に差し出しながら、悪戯っぽく笑う井上くんに、正直に答える。

「俺、じいちゃん子だったから、ここに連れてきたくて。じいちゃん、俺が彼女連れていくって言ったら、すげー喜んでたんだ」

「そっか。優しそうなおじいさんだね」

確かに、さっきすごく嬉しそうな表情してたなあ。

井上くんは、お茶を飲んで頷く。

「母さんの方のじいちゃんなんだけど、ここは代々受け継がれてるお店なんだ。母さん女姉妹の長女だったから、本当は、俺に継いで欲しかったみたいだけど、うちの父さんも長男だから、いろいろ事情があって、俺じゃなくて、おばさんの息子さん…つまり、俺の従兄弟が継ぐことになったんだ」

淡々と話す井上くんから、少し寂しさも感じる。

もしかしたら、本当はこのお店継ぎたかったんじゃないかな。




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