日替わりケーキとおしゃべりタイム
聞き慣れた声に、顔を上げると、同期の井上くんが苦笑いで立っていた。

「間違えちゃった」

「お前、相当疲れてんのな」

すっと私の手からブラックコーヒーを抜き取り、代わりに自分の持っていたペットボトルを私に差し出す。

「さっき、売店のおばちゃんにもらった」

「えっ、そ、そんな。悪いよ」

「俺、甘いの飲めないの知ってるだろ?」

よくよくペットボトルを見てみると、甘いカフェオレの文字。そういえば…そうだった。

納得して、受け取って、井上くんの顔を見る。

「…お前さ、今日定時で上がれよ?」

「無理無理。全然仕事終わってない」

「いいから、今日やったって、どうせミスばっかでまたやり直しだぞ?だったら、今日帰って寝て、明日ミスなしで出したほうが絶対効率いいから」

「そうかもしれないけど…でも仕事できてないのに定時に上がるのは…」

「俺がそうしろって言ってんだから、いいの」

いや、井上くんにどんな権限が…と思ったけれど、きっと井上くんなりの気遣いなんだと思い、その優しさに、目がうるうるしてくる。

「つか、お前マジで顔色悪い」

「さっき、伊藤くんにも言われた」

「マジ、ゾンビも逃げる「失礼…」

あ…れ?

井上くんの言葉に反論しようとした瞬間、視界がグニャッと歪んで、遠くに井上くんの声が聞こえる気がした。










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