日替わりケーキとおしゃべりタイム

甘さ控えめクッキー

飛鳥と、飛鳥の彼氏が出て行った後、扉の閉まる音を確認して、りっちゃんが俺の方にくるっと向きを変えた。

勘のいいりっちゃんのことだから、きっと全てがつながったと思う。

まさか、こんな身近なところで飛鳥の彼氏と繋がっていたとは。

俺と目が合って、どう反応していいのか戸惑ったりっちゃんの笑顔に、俺も苦笑い。

「何も言わないでいてくれてありがとう」

そうりっちゃんにお礼を言うと、りっちゃんは俺に甘い匂いのする紙袋を差し出した。

「これ、店長から。一応健康を気遣って、脂質と糖質控えめらしいよ」

袋の中身を確認すると、プレーンクッキーがぎっしりと入っていた。

さすが店長。

「何も言わなかったというか、何も言えなかったの方が正しいかな…」

「まあ、りっちゃんのお兄さんだしな。…でもさ、どうして兄ちゃん苗字変えての?」

そう尋ねると、りっちゃんは、ちょっと切なそうに微笑むと、持ってきていたコーヒを一口飲んだ。

「…翼くんは、今お父さんの会社で身元隠して働いてるから。後々は後継ぐんだろうけど、色眼鏡で見られたくないっていうプライドがあるみたい」

そっか。…ということは、将来飛鳥は社長夫人になるのか。

想像したら、社長夫人っていうイメージが湧かなくって、笑いが込み上げてくる。

ふふっと思わず笑ってしまった俺を、りっちゃんは不思議そうに見ていた。



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