日替わりケーキとおしゃべりタイム
「ど、どうして…」

教えてないのに、デートだって分かったの…?

「滅多に浴衣着ない飛鳥が、急に来て、しかもお姉ちゃんが着てた物を探してるんだもの。綺麗な姿、見せたいからでしょ?」

さすが、お母さん。娘のことはお見通しってこと。

気恥ずかしくて、返事に迷っていると、お母さんは、今私が羽織っている浴衣に合わせて帯の色を選んでくれた。

「今度、紹介してね」

ふふっと優しく笑うと、小さなポーチから綺麗な金色のかんざしを私に手渡した。

「これね、お母さんがおばあちゃんから貰ったかんざし。代々、この家で嫁に受け継がれてきたそうよ。でもほら、あなた達、女の子だけでしょ?お姉ちゃんが結婚する時に、渡そうと思ったけど、あの子日本を離れちゃったし、飛鳥の方がこういうのちゃんと受け継いで大切にしてくれるじゃない?だから、飛鳥にもらって欲しいの」

金色のかんざしの端には、小さいけれどカラフルな宝石が何個も吊るされていて、揺れるたびに輝いてとても綺麗。

「こんな大切な物…私でいいの?」

「いいのよ。飛鳥だからこそ、このかんざしの良さが引き立つわ」

「ありがとう、お母さん」

「そうそう、久しぶりに夕飯食べていって。お父さんも、もうすぐ釣りから帰ってくるから」

今日は会社の人と川釣りっていって、朝早くからお父さんは出かけていたらしい。

お母さんだけだったから、ゆっくり浴衣選べたんだよね。

お父さんがいたら、デートだなんて口が裂けても言えない。

お姉ちゃんは結構自由人だったから、恋人がいても、結婚するって伝えても、取り乱すことなんてなかったのに、以前、私に彼氏ができた時は、すごく動揺して大変だったんだよね。

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