日替わりケーキとおしゃべりタイム
鏡に全身を映して、着崩れがないか念入りにチェックをする。

お母さんからもらったかんざしをアップにした髪の毛に挿して、私は待ち合わせの場所へと向かった。

あっ、もう来てる。

浴衣を着ている井上くんの姿を見付けると、すぐに井上くんも私に気がつき、爽やかな笑顔を向ける。

その瞬間、周りにいた女の子達が、井上くんに視線を移したのがわかった。

井上くん、かっこいいから…。

「飛鳥」

私の名前を呼び、少しずつ近づいてきた井上くん。いつもよりも何倍も爽やかで、カッコいい。

「浴衣、いいじゃん」

私を見て、ちょっと照れたようにそう言ってくれた井上くんの言葉に、少し気恥ずかしくなる。

「井上くんも、似合ってる」

「そう?花火まで時間あるから、軽く回ろうぜ」

井上くんは、そう言って、さりげなく私の手をとり、指を絡めて手を繋いだ。

手を繋いだだけなのに、すごくドキドキする。それに井上くん、いい匂いする。

ドキドキしながら、隣を歩く井上くんの横顔をじっと見つめる。

「…かわいすぎ」

「えっ?」

井上くんの呟いた言葉で、私の体が一気に熱を帯びた。

「予想以上」

そう言った井上くんの耳は真っ赤になっていて、私は照れながらもクスッと笑ってしまった。


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