日替わりケーキとおしゃべりタイム
「律は、職場では元気にやってる?」

「うん。ファンがつくくらい、超人気」

「くくくっ、さっすが」

井上くんは、嬉しそうに笑うと、ビールを流し込んだ。その様子を優しく見守った直樹は、

「じゃあ、ごゆっくり」

と言って厨房へと戻った。

2人の距離がちょっとずつ縮まって、私も嬉しくなる。

かき氷を口へ運ぶと、爽やかなパイナップルの香りが口の中へと広がった。

「うまい?」

「うん!」

私の返事に、くくくっと笑うと、私の手を持ってかき氷をすくいとると、井上くんは自分の口へと運んだ。

「へー、たしかに美味い」

甘いものが苦手なはずだけど、キャラメルナッツケーキもだけど、美味しいって言ってもらえて、これを作った直樹はやっぱりすごいんだと思う。

自分の口にかき氷を運び入れる。

んー。

頬っぺたが落ちそう。

「くくくっ。相変わらず、いい顔」

そう悪戯っぽく笑った井上くん。

「だって、美味しすぎて」

「うん。知ってる」

井上くんの顔が近づいてきて、そっと唇が重なる。

私の冷たい口内を井上くんの温かい舌がゆっくりと動き回る。

「んっ…まっ…っ…て」

「嫌だ」

一瞬だけ唇を離して、意地悪な顔でそう言うと、再び唇を塞ぐ井上くん。

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