日替わりケーキとおしゃべりタイム
「…もう!」

やっと唇が解放されたと思ったら、するっと、私の手からかき氷は抜き取られた。

「お前、今どんな顔してるか、自覚ある?」

えっ?

熱を帯びた顔を両手でおさえて、井上くんを見ると、井上くんは、

「はぁー…」

と小さく息を吐いた。

そして、かき氷をすくったスプーンを、私の口へとさすと、耳元で小さく呟いた。

「続きは、家に帰ったら」

言葉の意味を理解した私の身体が、ブワッと熱を帯びる。

「も、もう!」

「くくくっ。…楽しみだな」

井上くんの言葉にのぼせてしまいそうなほど熱くなり、私は今度は自分でかき氷を口へと入れた。

口の中ですぐになくなってしまうかき氷。でも、パイナップルの酸味と甘みは、口の中へと残り、甘酸っぱい気持ちにさせる。

「それにしても、こんなに花火って綺麗だったんだな」

井上くんは、そう言って、夜空に打ち上がる花火を見つめた。

「…来年も、一緒に見たいな」

無意識に、私の口からぽろっと出た言葉。

自分でもびっくりしたけど、井上くんはもっと驚いている。

「当たり前だろ」

くくっと笑ってくれた井上くんの言葉に、私は安心感に包まれていった。


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