日替わりケーキとおしゃべりタイム
「明日、実家に送っていくよ」

夜、井上くんの家で一緒に洗い物をしていると、隣で泡を流していた井上くんがさらっと言った。

「えっ?だ、大丈夫だよ!」

私は危うくお皿を落としそうになりながら、慌てて答える。

だって、まだお父さんに言ってない。それに、お姉ちゃんも帰ってきてるから、どんなことを言われるのかちょっとドキドキする。

「そんな、即答されると、傷つくんだけど」

冗談半分でそう言って、大袈裟にしゅんっとする井上くん。

「ご、ごめん。でも、私、まだお父さんに井上くんのこと伝えてなくて…」

「だからだよ。俺、飛鳥とは、この先も一緒にいるつもりだし、家族に早めに挨拶しておきたい」

〝この先も一緒に…〟の言葉に、私の頬の筋肉が緩む。

「そしてさ、急なんだけど、明後日と明々後日、温泉旅行予約しちゃったから。飛鳥何も予定ないっていってただろ?」

「えっ、い、いつの間に」

私の反応にくくっと笑うと、手の水気をタオルで拭き取った井上くん。

そして、私の頬を両手で包み込む。ひやっとした感覚に肩がビクッと跳ねた。

「せっかくの連休だし、ゆっくりしようぜ」

「う、うん」

井上くんは、私の返事に満足そうに笑顔を見せると、頬から手を離して私の頭をポンっと撫でた。

「先、風呂どうぞ」

そう言うと、井上くんは、リビングを出て行った。

佐藤先輩の言う通りだった。


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