彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode. 0】
目が赤い。泣いたのか?俊樹は自分が冷たくしていたことに思い至り、驚いて立ち上がった。
「……どうした?」
菜摘は赤い目で自分を見ると、頭を振った。
「いえ。お帰りなさい。お迎えもせずすみません。遅くなりました」
そう言うと、書類を自分の前において、背中を向けた。
俊樹は驚いて、彼女の腕をつかんだ。
「どうしたんだ?泣いたのか?俺のせいか?」
確か、自分が外出中に新村と打ち合わせだったはず。
だとすると、彼の前で泣いたのかも知れない。