彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode. 0】
 
 「課長さんに誘われて、お母さんからは了承もらった」
 
 「……いつかそう言うと思ってたよ。お前は喫茶店ごときで満足できる奴じゃない。そうしろ。親父は俺が何とかする」
 
 お兄ちゃん。大好き。
 
 「ありがとう。私もしかすると喫茶店に戻らないかも知れないけど。緑ちゃんがお腹の子を跡継ぎにしてもいいって言ってくれた」
 
 「はあ?」

 「ふふ。お兄ちゃん、緑ちゃんには敵わないねえ……」
 
 「そうだな。あいつがいない毎日なんてもう想像つかない。俺はホントに馬鹿だった。危なかったよ。ありがとな、菜摘」
 
 「緑ちゃん、身体気をつけてあげてね」
 
 「ああ。お袋たちにもよろしくな」
 
 「うん」

 そう言って私は店を後にした。父は大騒ぎしたが、母と兄が味方になりあっという間に就職が決まったのである。
 
 
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