彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode. 0】
 
 「だから、好きにしなさいって言ったのよ。お父さんは私に任せなさい。どうせお前が何を言っても反対されるから……お前のこと溺愛してるしね。奏のことはどうでもいいみたいだけど、お前は別なのよ、あの人……」
 
 「お母さん……」
 
 「私もね、お前はこの店で過ごすにはもったいない逸材だと自分の娘ながら思ってるの。奏よりも経営に向いている。奏は真面目で人の上に立つこともできなくはないけど、融通が利かない。緑ちゃんがいてこそうまくいくのよ。お前は店を出て社会勉強をもっとしてきなさい。そうすればもっと大きくなれるわ。この喫茶店より大きいものを経営できる」
 
 お母さんはこちらを見て真剣に話してくれた。

 嬉しかった。私を認めてくれるんだなと思った。

 お父さんが私を溺愛しているのは自覚してるからこれは決めてから説得すべきだとすぐに思った。

 今日は土曜日。

 久しぶりに緑ちゃんへ会いに行こうと決めた。社会人の先輩にこの話をするんだ。

 ケーキを焼いて持っていく。クランベリーのケーキは私の得意ケーキだ。

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