彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode. 0】
「……菜摘、お前。そうか、それでこの間もおかしかったんだな」
「え?」
「疲れてるのかと思ったけど、やっぱり違ったな。何か言われたのか?お前って好きなことやってるからいつも元気だし、変だと思ったんだ。心ここにあらずなんて初めてだったからさ」
出てきた前菜をゆっくり食べながら話す。
「私さ。何も考えずこの二年働いてきて、陰口に気付いたの本当に最近なの。馬鹿だよね。もう少し気をつけて人と接していればそんなことにならなかったのに……」
空になったグラスへ巧がビールを入れてくれる。
「気にするなよ。ほとんどが妬みだ。お前の能力は突出してる。しかも本部長の秘書もやってる。女どもの妬みだろ」
「……それだけじゃないよ。巧のことも言われてる」
「……ほっとけ」