彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode. 0】
彼が座るのを見ると、僕も前のソファへ腰を落ち着けた。
「森川さん?彼女なら買い物に出てる。手土産を買いにデパートへ行ったよ」
「いえ……そうですか」
「新村君。森川さんだけどね、来年三月からはおそらく僕の秘書一本になると思う」
「え?」
「彼女にはまだ言っていないがね。ほぼ決まりだ。僕はね、役員室の方へ上がる予定だ」
「それをどうして僕に話されるんでしょうか?森川には言わないで……」
「それはね。君ならわかるだろう。理由はふたつ。ひとつは業務部での彼女の仕事の引き継ぎについて。君の意見を聞いて調整しておきたいんだ。君の意見なら彼女は素直に従いそうだからね。もうひとつは……何だと思う?」