彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode. 0】
 
 「君はいっつも自分で作ることを前提にしているね。そうだ、聞こうと思っていたが実家継ぐのかい?」

 「そうですね。この会社に入ったらおそらく戻りたくなくなってしまうと思っていました。やはりそうなりました」

 「ふーん。ということは会社に骨を埋める覚悟ってことかい?」

 「状況によりますが、仕事をとっても許されるのならそうするかもしれません」

 「菜摘って呼んでいいかな?プライベートだからね。君も名前を呼んでね。前も言ったけど、家で本部長はやめてくれ」

 私はじっと彼の目を見つめて頷いた。
 
 「はい。俊樹さん」

 「いいね。何度聞いても良い響きだ。それでね、よく聞いてくれ。僕は春から役員室へ異動になる。菜摘、君にはついてきてもらうことにした」

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