彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode. 0】
「だから、それが嫌だとは言っていないでしょ。秘書と業務部の仕事を両方させてください」
彼は私の両手をつかんで自分の膝へ引っ張った。
「菜摘。よく聞け。これは秘密だが、俺の本名は氷室俊樹。氷室商事の次男だ。永峰は母の旧姓。社長はいとこだ。父は氷室商事の社長だから、いずれ氷室へ帰る。ここにいるのは一時のことだ。しかも、役員になるのは前から決まっていたことなんだ」
私はびっくりして、目が丸くなるほど驚いた。どういうこと?氷室商事ってこの会社より大きい会社でしょ?え?次男?
「何それ?嘘ついて騙してたの、私のこと……」
「そうじゃない、落ち着いてくれ。三橋と氷室は遠縁だ。元々取引もあるが、この会社には父の意向もあって入ったんだ。もちろん、三橋の会長も社長も了承している。業務部にいたのも理由があるが、それはおいおい説明する。俺のものになったらね」
私は立ち上がって一歩下がった。彼は驚いた。