彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode. 0】
決意
俊樹の指図通り、とりあえず巧に連絡して話す時間を作った。
午後から外出の彼に合わせ、打ち合わせ室で巧と向き合う。
俊樹はさっきの話以降、冷たくなった。菜摘は手のひらを返したように彼の態度が変わり、怖くなった。
それで、とりあえず言うことを聞いておいた方が身のためだと思い直して、引き継ぎの打ち合わせをすると彼に言ったのだ。
「……そうか」
外出前にそれしか言わない。目も合わせない。
菜摘はどうしたらいいのかわからなかった。
恋愛経験値が低いとこういうときにどうしたらいいのかわからないのだ。
巧を前にため息をついていると、じっと彼女を見ていた彼が口を開いた。