彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode. 0】
「ごめん。話せないけど、そういうこともあって彼は私を秘書一本にしたいらしいの。そうか、今わかった。これは私の決心ひとつなんだわ」
菜摘は泣き顔をあげて前をじっと見た。
「向き合って話し合う。彼から逃げてもだめだし、別れたいわけじゃない。彼にとって、私が業務部の仕事を取ることは別れを意味するんだわ、きっと」
「そうか。なら、話し合えよ。お前が泣くほど辛いと言うことも俺が言っておいてやるからさ」
菜摘は巧の笑顔を見て、ほっとした。彼の笑顔にどれだけ支えられてきたか今分かった。
「巧、大好き。本当にありがとう」
「……お前なあ。大好きとか軽く口にするから小学生なんだよ。大人の女になったんだろ?考えろよ」
菜摘は真っ赤になってしまう。そんな菜摘を見ながら巧は猛烈に後悔した。
時計を見ると、時間過ぎている。またにしようといって、解散した。