彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode. 0】

俊樹の思い


 俊樹は猛烈にイライラしていた。

 やっと手に入れた菜摘が、まさか男女の関係になってまでも仕事のことで自分に反旗を翻すとは想像していなかった。

 確かに自分が甘かったのかも知れない。恋愛経験のない彼女とそういう関係になればすぐに堕ちると軽く考えていた。

 だが、彼女は自分の目をしっかり見て先ほどプライベートと仕事は別だとハッキリ言った。彼女のどこが好きだったのか、今更気付いても遅い。

 そういう所が好きだったはずだ。並外れた能力。女を武器にしないところ。だが、譲れない。これだけは譲れないんだ。

 俊樹は手を握りしめる。

 決めていることがある。兄もそうなのだが、公私共に愛する人とは一緒にいると決めているのだ。

 
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