彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode. 0】
 
 「個人的な理由です。秘書がうるさくて……」

 社長は俊樹の顔を見て、笑い出した。

 「はは、これは面白いものを見せてもらった。お前のそんな顔、いや、最高だ。なるほどね。そういや森川さんは業務部の宝だからねえ。彼女が嫌がってるんだな。役員室へ連れてくるって言ってたからな。俺もたいしたもんだと思っていたんだよ。やはり、彼女拒絶したんだな」

 俊樹は笑われるとは思っていなくて、顔をしかめた。

 「わかったよ。面白かったから協力してやるよ。特別にいとことしてな。いとこの大切な人のためだ。で?付き合うことになったのか?」

 「ああ。それはそうなんだが……」

 「お前も面倒くさいなあ。どうせお前も陽樹さんみたいにしたいんだろ。俺なんて会社でも妻と一緒なんてまっぴらごめんだね。つまみ食いもできないだろ」

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