鬼の子



綱くんに見守られながら、一生懸命になってシュートの練習を重ねる。

「・・・フォームが汚い!」
「力が弱い!」
「だから!ボールの持ち方ちげえよ!」


「・・・・・・はい!」


・・・・うう、本当に厳しい。

綱くんのバスケ指導は、想像する何倍も厳しかった。だけど、その厳しさが私のためだと思うと、嬉しさの方が強かったんだ。



「・・・下手くそ」とぼやきながらも、シュートのコツを何度も、何度も、教えてくれた。

口は悪いけど、本当は誰よりも優しい人だと改めて感じた。



練習に没頭していたら、気付けば辺りは暗くなり始めていた。

「・・・・ちょっと待ってろ」

そう言い残すと、何処へ小走りで向かって行った。


綱くんがいなくなったうちに、鏡で自分の顔を確認する。
運動して、汗ばんだ額をハンカチで拭って、アイブロウが落ちてないか、じっと見つめた。


・・・バスケの練習に没頭しちゃったけど、汗で顔乱れてないかな?



そんなことを思っていると、鏡の中の自分の顔の表情が緩みっぱなしな事に驚いた。そんな姿に「私、何してんだろ」と思わず笑ってしまう。

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