鬼の子
いつもの気だるげそうな表情で戻ってきたかと思えば、手にはスポーツ飲料のペットボトルを持っていた。
「ほい」と乱雑に渡されたペットボトルは、ひんやりして、運動で熱った体には嬉しい。
「・・・・・座るか」
返事の代わりに頷いて、ベンチに腰掛けた綱くんの隣に黙って座る。
普段は前後の席で、近い距離にいるけれど、いつもと場所が違うだけで、なんだかやけに、ドキドキしてしまう。
ちらりと横顔を見上げると、あまりに綺麗なので、私の心臓はさらにドキドキと波打つのだった。
ドキドキと鼓動がうるさいので、隣に座っている綱くんに、私の鼓動が聞こえてしまわないか心配になる。
「・・・余計なお世話だったか?」
「え?」
「球技大会、参加する形になったけど俺が勝手に進めたから。迷惑だったかなって・・・・・」
いつもより柔らかな声で聞いてくるので、心配してくれているのが伝わってくる。
「・・・いや、ありがとうだよ!ありがとうの言葉しかないよ!」
「くくっ。そっかそっか」
出てきた声は自分でも驚くくらい大きな声だった。大声で否定したものだから、それが可笑しかったのか肩を揺らして笑っている。