鬼の子
夕日のオレンジ色に照らされた表情に、胸の奥がツンと痛くなる。
この気持ちの正体が分からない私は、聞きたくても聞けなかった言葉を、意を決して投げかけた。
「綱くんは、鬼の子の呪いが怖くないの?
転校してきた日『触ったら死ぬよ?』って、クラスメイトに言われたのに、私に躊躇なく触れたから・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
ずっと聞きたかったけど、怖くて聞けなかった。
勇気を振り絞って言葉にしてみたけど、沈黙の時間が恐怖を掻き立てる。
10秒程度の間が、途轍もなく長く感じた。
「俺、生きることに興味ないのかもな」
ポツリと吐き捨てるように言葉を放つ。
哀しげな目をして、遠くの夕日を見つめていた。
「それって、どういう意味?」
「そのままの意味。俺は死ぬのなんて怖くない。
だから、お前のことも怖くない」
———お前のことも怖くない。
幼い頃から怖い怖いと言われ続けた私には、嬉しくて心に突き刺さる言葉だった。
どうして彼は、私の欲しい言葉をくれるんだろう。人よりも愛や情に飢えている私は、彼の言葉で一喜一憂してしまう。
言葉一つでこんなにも心を弾ませていて、簡単な女で自分でも笑ってしまう。