鬼の子
綱くんの言葉の意味を理解したくて、考え込んでいる、数秒の間に、私の目の前には綱くんの綺麗な顔があった。
「———っ?」
あまりの距離の近さに、鼓動がうるさく鳴り続ける。金縛りにあったように身体が動かなかった。
距離はさらに近づいて、彼の吐息を身近に感じた。
え、な、なにが起きてるの??
まったく余裕がない私は、今の状況が理解できていなかった。
固まっている私にさらに近づいて、マスク越しの口元に柔らかい感触が伝った。
・・・ようやく綺麗な顔が離れた。
今、起きたことは数秒のできごとなのに、何が起きているのか理解が出来なかった。
・・・・今、何が起こったの?
呆然としている私の顔を覗き込むと、
「・・・マスク越しはセーフだったな」
そう言って悪戯な笑顔を浮かべる。
それでも頭の理解が追いつかなかった。
そんな私に言葉を続ける。
「なに?分からなかった?
・・・・・・もう一回する?」
甘く囁いて顔を近づけてきた。
・・・そこでようやく状況を理解する。