鬼の子
「綱くんっ!綱くん!」
動揺している私をよそに、綱くんは体をむくりとゆっくり起き上がった。
「・・・マスク越しならセーフって言っただろ?」
「よ、よかったあ。死んじゃったかと思った」
「悪い、悪い。あまりにも必死だから、意地悪した」
ホッとして全身の力が抜けてその場に座りこんだ。謝りつつも、ちっとも悪びれた様子のない彼は、目を細めて笑っていた。
「なんで・・・・・キスしたの?」
「———したくなったから?」
私の質問に何故か疑問系で返された言葉は、想像していた返答を遥かに上回っていて、私はもう返す言葉が見つからない。
綱くんの考えている事が分からなすぎる。