鬼の子
「こんなにバスケが上手なら、綱君もバスケに出たらいいのに」
「俺は・・・・・、面倒なのは嫌いだから」
真剣な面持ちで困ったように息を吐いた。
その表情は、綱くんが怒っているのか、悲しんでいるのか分からなかった。
意味深な表情をしたかと思えば、次の瞬間にはいつもの表情に戻っていて、少し安堵する。
私がシュートを決めると、自分の事のように八重歯を除かせて無邪気に笑ってくれる。そんな姿を見ると、胸がいっぱいで感情が溢れ出しそうになる。
ただ、鬼の子が恋をしたって無駄なのだ。
相手を困らせてしまうだけ。
綱くんを困らせることだけはしたくなかった。
そう考えてる時点で、負けなのかもしれないけど。
———私はこの感情を絶対に認めない。
この感情の正体を考えないように、練習に没頭した。
最初で最後の球技大会、何か爪痕を残したい。
綱くんへの感情と気持ちの整理ができないまま、
———球技大会は明日へと迫っていた。