鬼の子
球技大会で浮き立つ生徒が溢れかえる中、キョロキョロと辺りを見回して私は綱くんの姿を探していた。
球技大会に参加出来るようになったのは、綱くんのおかけだった。バスケの試合が始まる前に、お礼を直接伝えたかった。
———今日は朝から綱くんの姿を見ていない。
球技大会、乗り気じゃなさそうだったし
・・・もしかして、休んだのかな?
バスケの練習付き合ってくれて「ありがとう」って伝えたかったなあ。
「あ、いたいた。鬼王さん。
もうすぐ、バスケの試合始まるから、こっちにきて」
遠くから手招きをしているのは、クラスメイトの一ノ瀬さんだった。彼女は机の落書きを消そうとしている時に、雑巾を差し出してくれた人だ。
あの日以来、たまに目が合ったりする。
友達になれた訳ではないけれど、私は勝手に好意を抱いて仲良くなりたいな。と思っていた。