鬼の子
球技大会はクラス対抗。試合の相手は3年C組。同じ3年生同士での試合だった。
「宜しくお願いします」
「宜しくお願いします」
試合開始のホイッスルと共に、互いに挨拶を交わして試合がスタートした。
「頑張れ——」
「負けるな———」
「まずは、1点取ろう」
応援の声や歓声があちこちから飛び交っている。
歓声と雑音が入り混じり、体育館は熱気に包まれていた。
バスケコート内にいる試合に出る生徒は、ピリついていて緊張感が伝わってくる。試合が始まったのだと実感させられる。
私は体育の授業も暗黙の了解で見学していた。
すなわち、バスケはしたことがあっても、バスケの試合をした事は人生で一度もなかった。
初めてのバスケの試合への不安。それに加えて、相手チームから突き刺さる悪意溢れる私への視線。私はその場の空気感に圧倒され、体が固まってしまった。
予想以上の試合への歓声と、自分へ向けられる鋭い視線に、緊張は自分のキャパを超えていて爆発寸前だった。
「あれ、鬼の子だよね?」
「鬼の子試合出てんの?」
「相手チーム悲惨〜」
それに加えて、他のクラスの生徒からの悪口が、止まることなく耳に届く。
極度の緊張と、悪口が心を傷つけ、ドクドクと心臓の鼓動が早くなるのが分かった。