鬼の子
ゴール下の前に仁王立ちすると、綱くんの読み通り、敵チームは誰も近づいて来なかった。
「鬼の子が、ボール持ったら誰がディフェンスするの?」
「私、嫌だよ。死にたくない!」
「私だって、死にたくない!」
敵チームはグチグチと不平不満をこぼす。
その間もコート内でボールは動いていた。
「鬼王さん!」と声がすると共に、ボールが私目掛けて飛んできた。
ボールを手の中に収めると、グッと力を入れた。
ゴール下でボールを持っているのに、鬼の子を恐れて誰もボールを取りに来ない。
周りはガラ空きのまま、シュートを放った。
ガコン、というバスケットリングに当たる音と共にボールはネットの中に綺麗に落ちた。
「おおお———!」
「入った———!」
シュートが成功したと同時に歓声が湧き上がる。みんなハイタッチをして喜んでいる。
「やったあ!」
私も思わず声を上げて喜んだ。
「鬼王さん!ナイスっ!」
「この調子で行こう!」
クラスメイトは優しい言葉を私に投げかけてくれた。私はスポーツの楽しさを初めて知ったので、楽しくて仕方なかった。