鬼の子
12 気持ち
「おはよう」
「おはよー」
朝の挨拶をする生徒達の声が乱雑に飛び交う。
そんな中、誰にも挨拶をされずにいつも通り1人で教室へと向かう。
・・・・昨日は楽しかったなあ。
学校の空気を吸って、球技大会のことを思い出した。その余韻がまだ残っている私の足取りは軽かった。
ガラッ、ドアを開けて雑談が飛び交う教室へと、一歩踏み出す。ガヤガヤと雑談していたクラスメイトの視線が一気に私に向けられる。
突き刺さる視線は、今までと同様だった。
そうだよね、球技大会で少し話したからって、今までとなにが変わるわけないよね。
心のどこかで期待していたのかもしれない。
チクリと胸の奥が痛かった。
きっと、また、悪口を言われる。
・・・大丈夫、慣れっこだから。
身構えていると、予想していたものとは違う、言葉を投げかけられた。
「鬼王さん、球技大会お疲れ様!」
「肩大丈夫だった?」
「シュート上手かったね」
「女子バスケの得点王!」
私に向かって放たれた言葉は、悪口や中傷ではなくて、あたたかい言葉ばかりだった。
「え、」
慣れていない私は戸惑いを隠しきれない。
優しくあたたかい言葉達は私に向かられてるはずがない。と後ろを振り返ったり辺りをキョロキョロしてしまう。
「みんな、鬼王さんに言ってるんだよ」
挙動不審な様子をみて、私の気持ちを察してくれた一ノ瀬さんが教えてくれた。
みんなが私に話しかけてくれている・・・・・。
注目されているのも急に恥ずかしくなり、どこかに身を隠したいくらいだった。