鬼の子
「ごめん」
そう伝えると、光希は「わかってる」といい、無理やり作ったような下手くそな笑顔をみせた。
「光希、ごめん。
私、綱くんが好き・・・・・だと思う」
「だと思うって・・・・・。ハハッ。
知ってたよ。茜が綱のこと好きになってる事くらい」
「・・・・・・」
「何十年一緒にいると思ってんの、茜が誰を想ってるかくらい、分かっちゃうんだよ?」
「困らせてごめんな」下手くそな作り笑いを浮かべると、私の家とは逆の道を歩き出した。
追いかける資格のない私は、だんだんと遠くなる背中を見つめていた。
これでよかったのか、もっと他に伝え方があったんじゃないか。いろいろ考えては見たけれど、答えは見つけられなかった。