鬼の子
⋆⸜꙳⸝⋆




この日、学校には休む連絡をして、お母さんと一緒に、お父さんのお見舞いに病院へと向かった。


お父さんが入院する総合病院は叔父さんが働く病院だった。叔父さんの計らいかは謎だが、病室は小さめの個室だった。


コンコン。
ノックをして病室へと踏み入れると、飾り付けも何もない白い壁が広がっていた。


普段と変わらない柔らかい表情で笑うお父さんがベッドに腰をかけていた。





「・・・・・お父さん。ごめん。私知らなくて」

泣きそうな声を絞り出して伝えた。


「それは、お父さんがお母さんに頼んだんだよ。
茜には内緒にしてくれって。余計な心配させたくなくてさ」


私の隣でお父さんを見つめるお母さんの目には涙が溜まっていた。




この涙は、お父さんへの涙だと、この時は思っていた。




———この時の涙の意味は後に知ることになる。
< 171 / 246 >

この作品をシェア

pagetop