鬼の子
病棟に入ったからといって、綱くんが患者さんとは限らない。家族の誰かが入院していて、お見舞いに来ただけかもしれない。
そうだ、きっとそうだよ。
動揺を鎮めるために、何度も自分と会話をして、暗示のように言葉を繰り返していた。
視線の先に綱くんの姿が見えた。私の目に映る綱くんは、パジャマ姿で激しく動揺した。
私の頭の中の期待した考えを否定するかのように、その姿は病棟に入院していることを、教えてくれた。
動揺して立っているのがやっとの私に、優しそうに笑う看護師さんが声を掛けてきた。