鬼の子






「あれ?その制服って・・・」

「あっ、えっと、渡辺綱くんって・・・・・」


平然を装うと、余計に声が震えた。
ドクドクと脈が速くなる。心が不安定だった。


そんな患者さんは居ないと言って欲しい。
———心でそう願い続けた。



「綱くんの友達?なんだ〜。いつも友達なんていねぇ、とか強がってるくせに、こんなに可愛い彼女いるんじゃんね」


「彼女じゃ・・・・・。あの、綱くんの病気って・・・・・」


「・・・・・本人から聞いてないの?」

「まあ、言わなそうだよね。個人情報だから、言えないんだけど・・・、一緒にいられる時間を大切にしてね」


私が、言葉に詰まらせていると言葉を続けた。
彼女の言葉に頭が混乱する。気が動転して言葉が出てこない。



今の言い方。
それって・・・・・、まるで———。

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