鬼の子
「・・・・・死なないよね?」
「・・・悪い。俺死ぬんだわ」
綱くんの言葉が頭の中でこだまする。そして、頭がその言葉の意味を理解すると、銅器で殴られたような凄まじい衝撃が頭に走った。
腕には点滴のチューブが見えた。筋張って男らしかった腕は心なしか細くなったような気さえした。
そんな姿を目にすると、心がギュッと締め付けられて苦しくなる。
受け止めたくない現実を、目の前にいる綱くんの姿が、認めざるを得ない。
「この町に癌について有名な先生がいて、その先生に見てもらうために引っ越してきた。最後の頼みの綱だった。だけど、転移してるし、若いから進行も早くて、もう緩和ケアに切り替えようって」
うん、と相槌をうつことしかできなかった。
「学校に通ったのは、俺の最後の願い?的な。
どうせ死ぬなら普通に学校行って、ポックリ死にたいって言ったんだ。・・・でも、癌細胞が俺の体を思ってたより蝕んでて、日常生活もキツくなった」
私は返す言葉が見つからず、ここで私が泣くのは違うような気がして、ギュッと力を込めて涙を堪えていた。