鬼の子
なんて言葉をかけていいのか分からなかった。しばらく無言の状態が続く。
点滴の袋から、滴がゆっくり落ちるのを、動揺した心のまま眺めていた。点滴の滴の落ちる音が聞こえるんじゃないか、と思うほど私達は黙り込み、辺りはシンと静かだった。
「・・・・だから、ここには来るなよ。元気でな」
スッと立ち上がり、私に視線を合わせる事なく、歩き出した。もう一度、振り向いてもらえないかと淡い期待を視線に乗せるも、振り返ることはなかった。彼の後ろ姿をじっと見つめていた。
止めることも、質問責めすることも今の私には出来ずに、遠くなる愛しい人の背中を見つめていた。
気の利いた言葉の1つも言えなかった。そんな言葉出てこなかった、言ったところで全てが嘘っぽくなってしまう。
だって、今の私の心にある気持ちは
———死なないで。
この気持ちだけだった。